同位体論文

体サイズと栄養段階の関係を理解することは、サイズ依存的な相互作用によって駆動される個体群や食物網のダイナミクスを理解するために欠かせない。しかし、体サイズと栄養段階の関係が時間とともに変化するのか(そしてどのように変化するのか)ということは殆ど判っていない。本研究では、40年以上に及ぶイサザの長期標本を用いて、窒素安定同位体比(d15N)の時系列データを調べた。栄養段階のサイズ依存性は、d15Nと体サイズの対数値の相関の傾きで定義した。その結果、傾きは約60%の年で有意に正であるが、他の年では相関が無く、時間とともに変動していた。これは、捕食性魚類における栄養段階のサイズ依存性の長期変動性に関する最初の定量的な(安定同位体に基づく)証拠である。傾きの時間変動性は、魚類個体群の栄養ダイナミクスにも影響した。栄養段階のサイズ依存性の時間変動性のメカニズムに関する仮説を提示した。


アクセプトまで長かった。Oさんに半分そそのかされつつ、自分でも興味があって何となく始めたのがD1の終わりの春。イサザの同位体比の年変動については、OGWさんの先行研究があったけど、あれは年1個体ぐらいしかやっていなかったので、数を増やせば、それなりに何とかなるだろうとしか考えていなかった。データの面白さよりも実証研究の経験としてやってみたかったかもしれない。で、年20個体を分析するのだが、最初に標本瓶から抽出するときにまず悩んだ。イサザ個体群の栄養ダイナミクスを評価したい。分析するのは大きい個体?小さい個体?それとも中くらいの個体?サイズによって餌や栄養段階も違うし。じゃあ、まんべんなく選ぶか?それともサイズ構造を反映させるか?サイズ分布を調べるのも、それだけでひと苦労。で、結局、サイズの違いを見ようと思いつきまして、上のそうな結果にまとめました。


魚では栄養段階のサイズ依存性が普遍的に見られる。稚魚はプランクトン食って、成魚では魚食やベントス食になったり。サイズ構造のモデルは魚のためにあると言っても良いくらい。サイズによって栄養段階や他種との相互作用強度が違う。それに基づいて、個体群モデルや食物網モデルが構築される。このサイズはこの餌を食いますよーとか。また、実際にサンプリングされた魚の体サイズだけから、そこの水系の様々なことを推察したりもできる。でも、こういう考え方は全部、体サイズと栄養段階の関係が一定であると仮定している。でも、その仮定はまだ検証されていない。だから、確かめるというスタンスで。


イサザの話をすれば長くなるので、このへんで。読んでコメントくれた学生にお礼の報告をしたら、ビールで祝杯だ、と言われたが、ほぼ毎日飲んでます。


CLC論文I
西のほうに投稿。ついでに来月のポスターも改訂。


ジョグ18㌔
快走