代理レクチャー

Mさんに代わり、理論進化生態学のクラスで。講義というよりは自分の研究紹介。「進化」という名目上、IGPの話にしました。モデルの説明以外では数式を使わなかったが、おそらく理解してもらえたのではないだろうか。


Catastrophic shifts in ecosystems
Scheffer et al 2001 Nature
ASSによるレジームシフトの基本的な概念に加えて、湖沼や海洋、砂漠などの各系でのレジームシフトとそのメカニズムを紹介。しかし、同時に、ASSと断定するには証拠不十分である言い、幾つかの問題点も指摘。とりあえず、レビューと称するものには目を通す。


Catastrophic regime shifts in ecosystems: linking theory to observation
Scheffer & Carpenter 2003 TREE
野外・実験・理論の研究において、レジームシフトやASSの証拠をレビュー。事例の紹介というよりは、各手法における問題点を指摘することに重きを置いている。これまでの証拠としては、野外研究では、系の状態が時系列に沿って突然に変化することや、系の状態の頻度分布を見ると二山型になっていること、系の状態と環境要因の関係を見ると二つの相関が見られること、等。実験研究では、初期値依存性や撹乱への応答や操作実験によるヒステリシスの検出、等。しかし、多くの場合で、ASSによるレジームシフトの存在を断定するには問題点があり、決定的な証拠はまだまだ少ない。


Alternative stable states in ecology
Beisner et al 2003 Front Ecol Envirom
ボールと平面を使って、ASSの概念的な説明。ボールの位置が系の状態、平面の形状が環境条件。ASSの間でシフトが起こるには、概念的に異なる二つの要因がある。(1)ボールを無理やり移動させる。(2)平面の形状を変えて、ボールを違う場所に転がす。分かりにくいですか。自分でも読んでて分かりませんでした。おそらく、こんな感じの説明でしょうか。例えば、個体群のサイズ構造という状態を考える。そこから大きな個体を一時的に取り除いた結果、小型個体が卓越した状態で何らかの要因で安定になったとする。これは(1)の考えになるでしょうか。この場合、系の状態遷移は外部要因によって駆動されたことになります。(2)の考えは、例えば、餌や死亡要因に関わる環境条件が永続的に変化した結果、系の内部要因の駆動によって、小型個体が卓越する状態にサイズ構造が変化する場合でしょうか。やっぱり分かりにくいですね。