ビザ取得と論文と本屋と

大阪にある駐日台湾事務に停留ビザを申請。まず近くの写真スタジオで証明写真を撮影。台湾でのIDカード用に余分に印刷を注文したが、頼んだサイズが特殊らしく、トラブル多発。結局、いろんなサイズの写真を20枚ほど手に入れた(得)。ビザ申請には本来なら日本に帰るための航空券が必要だが、Zからのinvitation letterのお陰でスムーズに受理された。即日発行には数時間かかるというので、大阪城まで行き、論文を読みながら待った。昨日のレースで福士選手の足が止まったのはこの近くかもしれないと思いながら、ざっと2本。


まずはAltruism in insect societies and beyond: voluntary or enforced
Ratnieks & Wenseleers TREE 2008
昨日読んだ協力論文の流れで。社会性昆虫における利他行動について。Hamiltonの包括適応度の理論は古典的なメカニズムとして知られている。しかし、実際に見られる利他性の度合いは理論予測よりも遥かに高い。このギャップは、ワーカーは自身の包括適応度を上げるために自ら働いているわけではなく、社会的な抑圧(coercion)によって利他性が強制されていることを示唆する。例えば、女王がワーカーの産んだ卵を殺すことで、ワーカーとしては繁殖を抑制する方が適応的になる。女王になるために特別な餌や飼育環境が必要なのも、そのためだろう。一方で、ワーカーとしてもcoercionを回避するように進化しているように見える。例えば、ワーカーに擬態したり、卵を女王の卵に擬態させたり。coercionの利益は2つ、労働力と血縁度の維持。coercionは社会性が進化した後に出現したように思われる。他の系についても考察。シクリッドの協同保育やクリーナー共生、根粒菌、人間。アミメアリはどうなっているのだろう?


次にDetecting and managing fisheries-induced evolution
Kuparinen & Merila TREE 2007
漁獲による進化的影響について。特に成熟齢・サイズに着目して、個体群ダイナミクスへの影響を議論。魚類では、生活史形質の種内変異や遺伝率が高く、また自然死亡よりも漁獲死亡が強い傾向にある。そのため、漁獲は数十年のタイムスケールで進化を引き起こすと考えられる。環境要因や可塑性によっても形質は変化するものの、進化は不可逆的であり注意が必要。従来のProblematic Maturation Reaction Normでは進化を扱えない。量的遺伝やモデリングにも限界がある。漁獲サイズ・場所の制限においても進化的影響を考慮すべき。加えて、個体群変動や種間相互作用による群集内での波及効果も考慮すべき。将来的にはゲノミクスの確立が有望か。


さてビザを手に入れた。滋賀に帰ってきたら既に夕方。引越しに備えて部屋の整理。要らない本やCDをブックオフに納入。約100冊で3000円程度。京都・滋賀への引越しのたびに本を処分しているが、本当は手放したくない。2度読みすることはないが、読んだ本は何か特別な思い入れがあるかのように感じてしまう。買取計算をしてもらっている間にも、読みたい本が何冊かあったが今回は我慢。。。