フツイマセミナー

ダーウィン年の最後のイベントとしてフツイマの講演。代表的なテキスト「進化生物学」の著者として有名な人。もちろん大盛況。講演開始前に多くの人が着席済みというのも珍しい。話は、自身の半世紀の研究人生と照らし合わせながら、進化生物学がどのように発展してきたのかということ。PCRもコンピューターもなく、DNAが発見されてまだ数年しか経っていなかった時代。多くのことが予測と想像に基づいていた。それから、進化の歴史やメカニズムなどについて、実に色々なことが確かな証拠によって明らかになってきた。ダーウィンが予測した性選択は、予想以上に普遍的な現象であることが分かった。種の系統関係や種分化の速度も明らかになった。霊長類における種の系統関係は、疑う余地も全くないほどに断定されている。ヒトは、アフリカを出たあと、ほぼ同時期に枝分かれして世界中に移動していった。たった一つの遺伝子の変異が毛や羽の色を支配しており、種の間の垣根は思っていたよりも低い。などなど。その一つ一つを紹介するたびに、「こんなことまで分かるなんて想像も出来なかった」「どうしてこんなことを知ることが出来ると思えただろうか」と繰り返す。有名な人の講演というのは、有名であるが故に、新鮮味を感じにくいということがありますが、もちろん今回はそんなことありません。あっという間の一時間半。フツイマは、研究者としてはもちろん、良き教育者としも表彰されているようです。


科学の発展の話は、進化生物学に限らず、数学でも天文学でも、人を惹きつけるものがあるのかもしれません。「知ることが出来るわけない」と思っていたことが分かったときの感動は、「調べれば分かること」を調べて分かったときの感動と比べて、どれほど大きいのでしょうか。文庫本の中だけではなく、そんな大きな感動を一度は味わってみたい。


生態学における「知ることが出来るわけない」という問題は何でしょうか。