頻度依存的な繁殖

ある被食者個体群の中に、対捕食者防衛には有利だが、繁殖には不利な系統の出現を考える。繁殖は同一系統間で効率がよいと仮定し、正の頻度依存性を持つとする。


野生型(N1)と変異型(N2)と捕食者(P)のダイナミクスを以下のように記述する(i = 1, 2)。
Ni/dt = {ri(Ni/��Ni) (1-Ni/K)-aiP}Ni
P/dt = (��biaiNi-m)P


riは基本繁殖率、Ni/��Niは繁殖率の頻度依存性、(1-��Ni/K)は種内競争
aiとbi、mは捕食者の攻撃率、同化率、死亡率


初期条件として、変異型は非常に少なく(ゼロに近い)、野生型と捕食者だけが存在する状態を考えると、その時の各密度は
N1* = (r1/a1)(1-N1/K)
N2* = 0
P* = m/b1a1


この状態で、変異型が出現できるかを調べる。変異型が出現するためには、上記の初期状態で変異型の1個体あたりの個体群増加率が正でなければならない。変異型の1個体あたりの個体群増加率は
(1/N2)(N2/dt)
= r2(N2*/��Ni*)(1-��Ni*/K)-aiP*
= -aiP*< 0


したがって、変異型は常に出現することができない。


ということになるが(単純な数理モデルでは)、肝は繁殖率の頻度依存性の項で、Ni/��Niがあると変異型の繁殖率がゼロになってしまう。そのため、繁殖形質に関する異系統は、対捕食者防衛や資源競争にどんなに有利であっても、繁殖において正の頻度依存的な影響を受けるならば、進化しえない。(頻度依存性の関数形を変えれば予測も変わる)。


これは繁殖干渉の問題でも同様で、例えば外来種などがやってきたときに、近縁異種の間で交配が見られることがあるが、必ずしも繁殖が成功するとは限らない(オスが異種メスに求愛しつづける、受粉しても実ができないなど)。もし一方の頻度が非常に少ない場合、マイナーな種は、メジャーな種からの過度な繁殖干渉によってうまく増殖できず、絶滅してしまうこともある。これは、種間競争の結果というよりも、繁殖の不利によるもので、初期頻度で結末が変わる。


ということを、最近想像した。